大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)55号 判決

被告人は殺人の犯意を以て相手方に対し実包装填の拳銃を向けその引金を引いたが故障のため弾丸が発射しなかつたものであり、この故障は原審第三回公判調書中鑑定人岩井三郎の供述及び同鑑定人の鑑定書中の各記載に依れば安全装置の固定安全子の手懸り部分の欠損に由来するものであつて、偶々発射しなかつたのは右固定安全子の残存部分が安全装置がかゝつた状態に置かれてあつた為であるが、右残存部分も手動によつて直ちに発火の位置に置くことができ且又固定安全子の手懸り部分がないため一旦安全装置の状態においた後でも拳銃全体に振動を与えることによつて撃発可能の状態とすることができ、本件拳銃は銃器として本来弾丸発射の機能を有する点においては欠くるところがないことを認め得るものであつて、要するに本件拳銃を以てするも場合によつては十分人を殺傷するに足りその故障即ち弾丸不発の原因は絶対的のものでなく全く偶然の事情に基いたものであることが明らかであつて、斯くの如く銃器としての本来の性能を有する拳銃に実包を装填してこれを相手方に向け殺意を以てその引金を引いたが銃器における偶然の故障のため殺人の結果が発生しなかつた場合は正に殺人未遂罪を構成すべきものであつて不能犯を以て目すべきものではない。されば原審が被告人につき殺人未遂の事実を認定し同罪の規定を適用したのは相当であつて、この点を攻撃する本論旨はいずれも理由がない。

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